「I Love You」と言えば、「あいしてる」と訳すのが普通だと思う。
でも、かの文豪 夏目漱石はそうは訳さなかったんだって。
彼は英語教師であり、ある生徒に対して「I Love You」の訳を「日本人はそんなこと言わない。『月が綺麗ですね』と訳しておけ。それで伝わる。」と言ったみたい。いかしてるね。
また、二葉亭四迷は「死んでもいいわ」と訳したんだって。
実際に本人たちがそう言ったかは都市伝説だけど、いかようにも解釈できるのが日本語の素晴らしいところだと思う。
と、同時にこれってお互いに同じ知識レベル※でないと通用しないと思うんだ。
※知識レベルという表現が正しいかはわからないけど、どう表現していいかわからないからここでは知識レベルとしておく。
たとえば、僕が大切な人に「月が綺麗ですね」と言ったところで、その人がこの逸話を知らないとただ月が綺麗だと感じていると思われて終わってしまう。
こんな悲しいことはないでしょう。
自分が意図していることを大切な人に理解されない。この悲しさは計り知れないよ。
そんなわかりにくいことしないで、「好きです」とか「愛してる」とか言えよと思われるかもしれないが、ここは好みの問題なのです。
このボールを投げてどう反応するのか?
その反応がドストライクだったとき、恋に落ちると思うんだよな。
さて、本書では100人の作家が100通りの表現で「I Love You」を表しています。
年齢、性別、その人の置かれている状況で様々な表現があると思うけど、是非一度ご自身の「I Love You」の訳し方を考えてみるのはいかがですか?
ちなみに、僕が一番気に入った訳し方はこちら
おまえのゲロだったら、きれいに舐めてやるよ
〜 花村萬月『夜を撃つ』(角川文庫より) 〜
著者である望月竜馬さんの解説に、
「楽しい時間を共有できる相手は大切だ。でも、自分の失敗・コンプレックス、すべてを受け入れてくれる相手はもっと大切だ。相手がどうして自分のことを好きかわからないとき、そこには理屈抜きの強力な愛がある。悪い部分さえ愛してくれる相手はきっと何があっても自分のことを守ってくれる」
とあった。
自分のコンプレックスを告白することができる。そして、それをすべて受け入れてくれる。
これにかわる愛はない。